CLマネジメントの時代~顧客満足経営からの脱皮~
著者:瀬本博一
定価:1400円+税
さまざまなビジネス本で頻繁に提唱されてきたCS(顧客満足)という概念。だが、著者の瀬本博一氏(本誌で「CLマネジメントの時代」を連載中)は「CSはともすると会社を潰してしまいかねない」と力説する。顧客満足を追求するあまり、顧客が求めてもいない過剰なサービスを提供し、それが経営破綻の引き金になってしまうことがあるというのだ。実際、顧客満足を追求して「良いものをより安く」に徹してしまったら、会社はいつかは潰れてしまうだろう。
では、CSに代わる新たな経営哲学はあるのか。瀬本氏はその問いに対して「CL(顧客信頼)こそが次世代の経営哲学だ」と答える。そして「企業はCSマネジメントを捨て、CLマネジメントを行うべきだ」と。
瀬本氏がいうCLマネジメントとは、顧客との信頼関係を構築するための取り組みのこと。それには経営者はもちろん、従業員全員が参加しなければならないという。また「顧客からの信頼を得ようとするだけでなく、顧客を信頼することも忘れてはならない」とも。そうして顧客との信頼関係を築くことができれば、自然とリピーターを増やしつづけることができるというのだ。だがこの場合、すべての顧客をターゲットにすればいいというものではない。自社の提供価値にマッチする顧客を選び、その顧客と信頼関係を構築していくことが重要だという。
もちろん、本書では顧客との信頼の築くために必要なポイントについても解説されている。たとえば「緊急性の高いソリューションビジネスや希少性の高い商品は、CLを得るために不可欠な要素となる」と。また、本書の後半では従業員との信頼関係を構築することの重要性やCL理念を継承するために不可欠な企業遺伝子の存在にまで論はおよんでいく。
たしかに、CL視点で提供価値や顧客との絆、社員との絆をつくっていくことができれば、企業は自然とイノベーションを繰り返すことができるようになるだろう。デフレ、円高がつづく今、CLマネジメントは多くの中小企業が生き残るための切り札になるのではないか。