百年企業100選 未来に残したい老舗企業
著者:百年企業100選制作委員会
発行:東方通信社
定価:1500円+税
「日本の老舗の素晴らしさを伝えよう」という思いのもと、東方通信社とTOMAコンサルタンツグループ、老舗企業研究会が協力しながら制作してきた一冊。総勢75名の執筆者による百年企業のエッセイや紹介記事が収録されている。執筆陣の職業業は経営者、コンサルタント、大学関係者、記者など多士済々で、それぞれの視点から100年企業の歩みや特色を描いている。また、掲載企業は合計100社に上り、47都道府県の百年企業が網羅されているので、日本全国の百年企業の特徴や魅力を感じることができるようになっている。老舗ファン必読の書だ。
「会計用語」で読み解く中小企業会計
著者:吉田 勝
発行:東方通信社
定価:1500円+税
一見すると分かりづらい会計用語。実際、「複式簿記と単式簿記はどう違うの」という会計初心者も多いはず。とくに中小企業の場合、会計や財務に強い人材が少ない場合が多く、数字を生かした経営ができていないことが多い。
そこで、本書では中小企業診断士、税理士、社会保険労務士の“トリプル資格”を持った超ベテランコンサルタントである著者が、中小企業会計をわかりやすく解説。第1章では会計編ということで、資産や負債、純資産などの仕組みを、第2章では財務編ということで財務管理の必要性や財務状態をチェックできる指標についてレクチャーする。そして、第3章では実践編ということで、会計を生かした利益管理、損益分岐点分析、原価管理、資金管理、資本調達、資本運用の手法をレクチャーする。これを読んでいけば、自然と中小企業における会計や財務の仕組みを理解することができるはずだ。また、とくに後半部分では中小企業の経営状態を診断するための指標を数多く取り上げているので、自社の経営分析をする際の教科書としても使うことができる。是非とも中小企業の経営者・マネジメント層、総務・経理担当者、中小企業コンサルタントにオススメしたい一冊である。
フクシマから未来へ
著者:増子輝彦
発行:東方通信社
定価:2000円+税
福島県選出の国会議員で、原発事故当時、経済産業副大臣を務めていた増子輝彦氏の著作。第1章の「『確固不抜』の精神で、政治家人生を福島の再生にかける」と「第4章:福島から未来への提言」には、著者自身が原発事故発生から現在に至るまで福島復興のために取り組んできた活動はもちろん、福島の明るい未来をつくるための提言が詰まっている。震災後の原発立地地域の陳情を一手に引き受けたことなど、現場にいた政治家ならではのリアルなエピソードが盛り込まれており、政治の力、そして有事の際に政治がはたすべき役割を感じることができる。
また、本書では少年時代から政治家を志し、2013年で政治家として30年の節目を迎えた著者の半生にもスポットを当てている。自民党、新党みらい、新進党を経て、現在の民主党に所属するようになってからも、一貫して政治改革と2大政党性の必要性を訴え続ける筆者の〝魂〟も感じることができるはずだ。
実践ワクワク経営 ベトナム起業
著者:蕪木優典
発行:東方通信社
定価:1400円+税
「チャイナ・プラス・ワン」の機運が高まるなか、ベトナムが注目を集めている。人口構成比のバランスがいい上に人口も市場も拡大傾向にあり、生産拠点としても市場としても大きな可能性を秘めているからだ。また、ベトナム人の多くが親日的であるということも注目されている理由のひとつになっている。
本書はそんなベトナムで日本人初の公認会計士資格を取得し、日系初の会計事務所を立ち上げて業界トップクラスの規模に育て上げた著者による「ベトナム奮闘記」。日系企業がほとんど進出していない頃からベトナムでビジネスを展開してきた著者の語りには実に説得力がある。また、巻末付録のQ&Aは著者のもとに寄せられたベトナムビジネスに関する質問とその回答をまとめたものだが、これも実にタメになる。進出企業がどのようなことに悩み、それに対してどのような解決策があるのかが一読すればわかるようになっているので、ベトナムビジネスを検討している人、はじめたばかりの人には是非とも手に取ってほしい。
後半ではリーマンショックを機に辿り着いた「実践ワクワク経営」を活用した経営手法も紹介されている。ちなみに、このワクワク経営とは利益や資産だけでなく、組織資産(ワクワク)や人的資産(イキイキ)、顧客資産(ニコニコ)も重視する経営手法で、㈱バリュークリエイトの三富正博氏が自身の経験をもとに確立したもの。著者はこのワクワク経営を取り入れることの重要性を説き、海外ビジネスの新たな〝あり方〟を提案している。
多様性と個の確立―時評と書評から時代を読む
(社)経済倶楽部の理事長が時評と書評を通じて日本社会の〝今〟を斬る!!
著者:浅野純次
発行:東方通信社
定価:700円+税
著者は東洋経済新報社で『週刊東洋経済』『四季報』の編集長を経た後に、東洋経済新報社社長、会長を歴任し、現在は東洋経済の姉妹団体であり、石橋湛山氏が設立した(社)経済倶楽部の理事長を務める浅野純次氏。月刊『コロンブス』では「食の経済ノート」を連載中、食材に関する見識と軽妙な語り口が好評だ。
本書は経済倶楽部が毎週金曜に開催している「経済倶楽部講演会」の講演録に収録された時評と書評を一冊にまとめたもの。数多くの経済人、学者と交流を深めてきたベテランジャーナリストならではの鋭い視点とユーモア溢れた文章に思わず引き込まれる。
51編から成る時評のテーマは政治・経済、社会、文化と幅広く、その時々の世相や著者の体験が大いに反映されていて興味深い。また、全編を通して著者の見識の深さがあらわれており、多彩な視点の数々に新たな気付きや発見を得ることができるはずだ。もちろん、石橋湛山氏に関する文章もあり、東洋経済新報社に脈々と流れる「湛山イズム」と現代における価値を見出すことができる。
著者は無類の読書家でもあり、本書に収録されている書評の数は201冊にも上る。ジャーナリストならではの視点で選ばれた本はいずれも読み応えがあるが、まずはこの書評を読んでから自分好みの一冊を手にしてみるというのもいいだろう。きっとお気に入りの一冊が見つかるはずだ。
また、本書には「個の確立と小日本主義―石橋湛山の言説とその現代的意味」、「雑誌の多様性と自立―雑誌メディアが弱体化した社会は怖くて脆い」といった小論文も収録。あらためて現代における「個」と「多様性」の重要性に気付かされる。