多様性と個の確立―時評と書評から時代を読む
(社)経済倶楽部の理事長が時評と書評を通じて日本社会の〝今〟を斬る!!
著者:浅野純次
発行:東方通信社
定価:700円+税
著者は東洋経済新報社で『週刊東洋経済』『四季報』の編集長を経た後に、東洋経済新報社社長、会長を歴任し、現在は東洋経済の姉妹団体であり、石橋湛山氏が設立した(社)経済倶楽部の理事長を務める浅野純次氏。月刊『コロンブス』では「食の経済ノート」を連載中、食材に関する見識と軽妙な語り口が好評だ。
本書は経済倶楽部が毎週金曜に開催している「経済倶楽部講演会」の講演録に収録された時評と書評を一冊にまとめたもの。数多くの経済人、学者と交流を深めてきたベテランジャーナリストならではの鋭い視点とユーモア溢れた文章に思わず引き込まれる。
51編から成る時評のテーマは政治・経済、社会、文化と幅広く、その時々の世相や著者の体験が大いに反映されていて興味深い。また、全編を通して著者の見識の深さがあらわれており、多彩な視点の数々に新たな気付きや発見を得ることができるはずだ。もちろん、石橋湛山氏に関する文章もあり、東洋経済新報社に脈々と流れる「湛山イズム」と現代における価値を見出すことができる。
著者は無類の読書家でもあり、本書に収録されている書評の数は201冊にも上る。ジャーナリストならではの視点で選ばれた本はいずれも読み応えがあるが、まずはこの書評を読んでから自分好みの一冊を手にしてみるというのもいいだろう。きっとお気に入りの一冊が見つかるはずだ。
また、本書には「個の確立と小日本主義―石橋湛山の言説とその現代的意味」、「雑誌の多様性と自立―雑誌メディアが弱体化した社会は怖くて脆い」といった小論文も収録。あらためて現代における「個」と「多様性」の重要性に気付かされる。